Laravelアプリケーションをサーバーにアップロードして公開する際、思いのほか手間がかかります。
通常のサーバーでは、PHPやMySQLのインストール、SSL設定などが必要で、これらを整えることでエンジニアはより迅速かつスムーズに開発を進められます。
ちなみに、CMSとして人気のWordPressもPHPで構築されています。適切な設定を行えば、WordPressとLaravelを同一サーバーで併用することが可能です。企業サイトとWebアプリを連携させる場合などに、この併用が役立つでしょう。
本記事ではLaravelでWebアプリを開発・公開する際のおすすめレンタルサーバーと注意点についてご紹介。
この記事の目次
Laravelとは
Laravelは、プログラミング言語であるPHPで記述するアプリケーション開発フレームワークです。
2011年のリリース以来、Laravelはその使いやすさと多機能性から多くの開発者に支持されてきました。現在では、世界で最も利用されているPHPフレームワークとして広く認知されています。
Laravelは、開発を便利にする機能が豊富であり、以下のような機能を有しています。
- MVCアーキテクチャ
- DI(依存性の注入)
- ORM(オブジェクト関係マッピング)
- セキュリティ(認証)
これらの豊富な機能を活用することで、ITエンジニアはLaravelを利用することで容易にアプリケーションを開発できます。
余談になりますが、ブログや企業サイトの構築が容易に可能なWordPressもPHPで記述されています。どちらもPHPで記述しているため、うまく設定することで、同じサーバー内でWordPressとLaravelの両方を稼働させることが可能です。
WordPressで構築した企業サイトと、Laravelで開発したWebアプリを連携させるといったことも容易に実現できます。
Laravelをデプロイ可能なサーバーの種類
サーバー上でプログラムを使えるようにすることを「デプロイ」と呼びます。
Laravelのプログラムをデプロイできるサーバーの種類について紹介します。
PaaS(Platform as a Service)
PaaSは、クラウドサービスの一種で、「プログラムをアップロードするだけでアプリケーションが動作する」サービスです。
後述するIaaSやVPSと違い、プログラムが動作する環境のみが提供されるため、サーバーそのものの管理が不要となります。
ただし、レンタルサーバーやVPSと比較すると、プログラムをデプロイするためには高い知識を求められることが多いため注意が必要です。
IaaS(Infrastructure as a Service)
IaaSは、仮想サーバーを利用できるサービスです。CPUやメモリ、ストレージの容量を選んで契約することで容易にサーバーを使うことができます。
IaaSはCPUのコア数とメモリ容量、ストレージを自由に選べるものが多く、VPSと比較しても多くの選択肢があります。そのため、エンジニアが最適なスペックを選択できるのは大きなメリットといえるでしょう。
また、IaaSは時間単位で課金されるため、サーバーのスペックを一時的に上げる「スケールアップ」や、サーバーを増やす「スケールアウト」が可能です。
時期や時間帯によって負荷が変わるような場合にはIaaSが適しています。
VPS(仮想専用サーバー)
VPSはIaaSと同様に仮想サーバーを契約して利用できるサービスです。IaaSと同様にCPUやメモリを選択して契約し、仮想サーバーの全機能を利用できます。
ただし、VPSは月単位の契約のことが多く、サーバースペックがある程度決められておりいくつかの選択肢から選択して契約します。
その代わり、IaaSと比較すると安価で利用できるため、「常時稼働させるサーバー」に向いています。
スペックは容易に変更できるため、「度のスペックを選んでいいかわからない」という場合には、まずはVPSの最安プランを契約し、状況に応じてプランを変更すると良いでしょう。
専用サーバー
専用サーバーは、VPSとほぼ同様のサービスとなりますが、サービス提供事業者が契約者のためにリソースの確保を確約します。
高価なかわりに物理的に独立したサーバー機器を用意してもらえるため、安定かつ機密性の高い情報を扱う場合に適しています。
レンタルサーバーでLaravelを使用できるのか
Laravelについて紹介してきましたが、レンタルサーバーではLaravelを使用はできるのだろうか?と考える方もいることでしょう。
結論から言うと、多くのレンタルサーバーでは、Laravelを動作させることはできません。
同じPHPを使っているWordPressが使えるレンタルサーバーは多いものの、Laravelのプログラムはインストールできません。
日本で契約できる安価なレンタルサーバーのほとんどは、安価なかわりに機能が制限されている「共用サーバー」であり、Webサイトの公開やメールの送受信などの特化した機能を提供しています。
多くのーバーでは、特定のアプリケーションのみが動作するようにできており、自作プログラムのデプロイは制限されています。WordPressの利用が可能なレンタルサーバーあっても、「自作プログラムのデプロイが可能か」をチェックした上で利用を開始する必要があります。
レンタルサーバーとクラウド・VPSサーバーの違い
多くのレンタルサーバーではLaravelを動作できないことが分かったところで、レンタルサーバーと、クラウドやVPSは何が違うのかを知っておきましょう。
レンタルサーバー(共用サーバー)とは
一般的なレンタルサーバーは「共用サーバー」という方式を取っており、ひとつの仮想サーバーを、複数の契約者が利用しています。
たとえば、ひとつの仮想サーバーを100人で利用する場合、誰か1人がサーバーに負荷をかけてしまうと他の99人に影響がでてしまいます。
影響を受けた99人は、同じ料金を払っているので「不公平だ」と考えるでしょう。そうならないためにも、多くのレンタルサーバーでは動作できるプログラムを制限し、負荷が高くならないように対策しています。
クラウド・VPSサーバーとは
クラウドサービスのIaaSやVPSは、共用サーバーと異なり契約者に対して「CPUとメモリ、ストレージ」の確保を約束し、OSごと利用できます。
選択したサーバースペックのリソースが確保されますので、他の利用者が重いプログラムを実行したとしても、自身が契約しているサーバーの動作に影響を与えません。
また、IaaSやVPSは仮想サーバーを自由に利用できるため、好きにソフトウェアをインストールできます。つまり、IaaSやVPSであれば、Laravelに限らず、好きなソフトウェアをインストールし自由にプログラムを動作できるのです。
ただし、注意点もあります。共用サーバーと異なりできることが増える分、セキュリティ対策やOSのアップデートなどは自分で実施する必要があります。Laravelで開発したアプリケーションが悪意の第三者から攻撃されたり、乗っ取ったりされないようにセキュリティには十分注意しましょう。
Laravelを公開するサーバーはVPSやクラウドがおすすめ
Laravelの個人開発で共用サーバーの利用は非推奨
Laravelで開発したWebアプリを公開したい場合、共用レンタルサーバーだとLaravelの公開が面倒だったり扱いに注意が必要です。
おすすめは専用レンタルサーバー(物理専用サーバー)のVPSやクラウドになります。
VPS(仮想専用サーバ)とは、物理的には共用サーバですが、仮想的に各ユーザーに独立したサーバが割り当てられている仕組みです。
例えば、共用サーバ内の他ユーザーが高負荷をかけていても、自分のVPSには基本的に影響がありません。また、VPSではroot権限が与えられるため、以下のような操作が可能です。
- 新しいソフトウェアのインストール
- LaravelやPHPのバージョン変更
- OSの変更やアップデート
これにより、自由度の高いサーバ環境を構築できます。
Laravelの環境構築に最もコストパフォーマンスが良く、バージョン管理も安全に行えるのはVPSです。低コストでLaravelを利用したい場合、VPSが特におすすめです。
クラウドはVPSより高価だがメリットも増える
クラウド環境では、負荷がかかった際に自動でサーバーを増設したり、リソースを拡張するなど柔軟な対応が可能です。これにより、近年のWebサービスにおいてクラウドは欠かせない存在となっています。
クラウドだとAWSやGCPなどマネージドで便利な物が多いですが、コストが高くなるため、Laravelで開発したサービスを単に公開する目的であれば、VPSで十分です。
Laravelが使えるレンタルサーバー(VPS)比較一覧表
Laravelを動作するサーバーを選ぶ際のポイントは、「サーバーのCPUとメモリ」です。サーバーでLaravelのプログラムを動作させる場合、相応のCPUとメモリが必要です。
とはいえ、どのくらい必要なのかはプログラム次第であり、「Laravelならこれくらいあれば充分」という目安はありません。プログラムの規模が大きいほど多くのメモリを消費しますし、一般公開するのであれば、アクセス数に応じてメモリだけでなくCPUも多く必要になります。
まずはご自身のPCでプログラムを動かしたうえで、最適なスペックを選択するようにしましょう。
Laravelが使用可能なレンタルサーバー(VPS)おすすめ5選
それでは、Laravelをデプロイできるレンタルサーバーと、その特徴を紹介します。
XServer VPS
プラン | 2GB | 4GB | 8GB | 16GB | 32GB | 64GB |
初期費用 | 無料 | 無料 | 無料 | 無料 | 無料 | 無料 |
月額料金 | 830円~ | 1,700円~ | 3,201円~ | 7,200円~ | 18,500円~ | 38,000円~ |
CPU | 3コア | 4コア | 6コア | 8コア | 12コア | 24コア |
メモリ | 2GB | 4GB | 8GB | 16GB | 32GB | 64GB |
ストレージ | 50GB NVMe | 50GB NVMe | 50GB NVMe | 50GB NVMe | 100GB NVMe | 100GB NVMe |
XServer VPSはレンタルサーバーとしての知名度が高く、
Laravelのテンプレートを利用することで、OSやミドルウェアの構築を省略し、迅速に開発環境を整えることが可能です。
全プランでSSHが利用可能で、ポートの解放設定も簡単に行えるため、初めてのVPS利用者にも優しい設計となっています。
また、定期的にキャンペーンが開催されており、ハイスペックなサーバーをお得に利用することができます。 (ちよブログ)
一方で、最低利用期間が1ヶ月あり、ビルトインされているコンソールの使い勝手や、ロードバランサーなどのトラフィック対策機能が物足りない点がデメリットとなります。
「とにかくハイスペックなVPSを契約したい」という場合に最適なVPSです。
申し込みはこちらから
ConoHa VPS
プラン | 512MB | 1GB | 2GB | 4GB | 8GB |
初期費用 | 無料 | 無料 | 無料 | 無料 | 無料 |
月額料金 | 460円~ | 763円~ | 1,144円~ | 2,189円~ | 4,389円~ |
月額料金(36カ月契約) | 296円 | 483円 | 493円 | 1,015円 | 1,915円 |
CPU | 1コア | 2コア | 3コア | 4コア | 6コア |
メモリ | 512MB | 1GB | 2GB | 4GB | 8GB |
ストレージ | 30GB SSD | 100GB SSD | 100GB SSD | 100GB SSD | 100GB SSD |
ConoHa VPSは、VPSとしては珍しく時間単位で利用できるVPSです。
一方で長期利用の契約の割引もあることも大きな特徴です。
開発やテストのために数日間の利用をしたい場合などに便利でつかる一方で、本稼働に向けて長期利用に切り替えることなども可能です。
開発者にとって便利な機能も豊富であることから、「ITエンジニアがおすすめするVPS」に選ばれています。
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シンVPS
プラン | 512MB | 1GB | 2GB | 4GB | 32GB |
初期費用 | 無料 | 無料 | 無料 | 無料 | 無料 |
月額料金 | 620円~ | 820円~ | 1,530円~ | 3,091円~ | 24,000円~ |
CPU | 1コア | 2コア | 3コア | 4コア | 12コア |
メモリ | 512MB | 1GB | 2GB | 4GB | 32GB |
ストレージ | 30GB NVMe | 100GB NVMe | 100GB NVMe | 100GB NVMe | 1600GB NVMe |
シンVPSは、高いコストパフォーマンスを謳うVPSで、同価格帯で比較すると他社より性能が高いことが特徴です。
また、最大で1.6TBのストレージに対応しているプランもあるため、大量のデータを扱うことも可能です。
なるべくお得に高性能なVPSを使いたい場合や、今後大容量が必要になりそうな場合にはシンVPSを選ぶとよいでしょう。
申し込みはこちらから
さくらのVPS
プラン | 512MB | 1GB | 2GB | 4GB | 8GB | 16GB | 32GB |
初期費用 | 無料 | 無料 | 無料 | 無料 | 無料 | 無料 | 無料 |
月額料金(大阪) | 616円~ | 858円~ | 1,694円~ | 3,429円~ | 6,875円~ | 13,109円~ | 26,217円~ |
月額料金(東京) | 641円~ | 908円~ | 1,795円~ | 3,630円~ | 7,260円~ | 14,117円~ | 28,234円~ |
月額料金(石狩) | 590円~ | 807円~ | 1,595円~ | 3,227円~ | 6,454円~ | 12,100円~ | 24,200円~ |
CPU | 1コア | 2コア | 3コア | 4コア | 6コア | 8コア | 10コア |
メモリ | 512MB | 1GB | 2GB | 4GB | 8GB | 16GB | 32GB |
ストレージ | 25GB SSD | 50GB SSD | 100GB SSD | 200GB SSD | 400GB SSD | 800GB SSD | 1600GB SSD |
さくらのVPSは、国内最大手のバックボーンを持つさくらインターネットが提供するVPSです。
歴史の長いVPSであることから安定性も高く、サポート体制が整っていることからも初心者が安心できるポイントです。
「はじめてVPSを契約するので不安」という場合や、災害対策のバックアップが必要な業務利用を想定する場合には、さくらVPSがおすすめです。
セキュリティ面については、不要なポートを開放しすぎないよう注意すれば大きな問題はありません。アプリケーション自体のセキュリティは、Laravelの実装や設定に依存するため、サーバー選びとは別にしっかりと対策しましょう。
また、SSL証明書については、Let’s Encryptを利用すれば無料で導入でき、定期的な更新により半永久的にSSLを利用できます。
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AWS
プラン | 512MB | 1GB | 2GB | 4GB | 8GB | 16GB | 32GB |
初期費用 | 無料 | 無料 | 無料 | 無料 | 無料 | 無料 | 無料 |
月額料金 | 3.5 USD~ | 5 USD~ | 10 USD~ | 20 USD~ | 40 USD~ | 80USD~ | 160 USD~ |
CPU | 2コア | 2コア | 2コア | 2コア | 2コア | 4コア | 8コア |
メモリ | 512MB | 1GB | 2GB | 4GB | 8GB | 16GB | 32GB |
ストレージ | 20GB SSD | 40GB SSD | 60GB SSD | 80GB SSD | 160GB SSD | 320GB SSD | 640GB SSD |
データ転送 | 1TB | 2TB | 3TB | 4TB | 5TB | 6TB | 7TB |
クラウドサービスの大手であるAWSでも、VPSサービスであるLightsailを提供しています。
AWSの提供しているIaaSであるEC2と比較しても容易に環境を構築でき、かつ安価に利用できます。
なお、Lightsailは他のVPSと異なり、月額料金が安いかわりにデータ転送量の上限が決まっています。各プランの転送量の上限を超えた場合追加の料金が発生するため、大容量のデータをやり取りするアプリを開発する場合には注意しましょう。
もう一つの注意点が、AWSはドル建てで請求されるという点です。最安のプランで考えると、1ドルあたり110円であれば385円ですが、1ドルあたり170円で換算すると595円となります。為替レートによって請求額が毎月異なりますので注意が必要です。
また、AWSには今回紹介したLightsail以外にも様々な機能・サービスが提供されています。
すでにAWSを利用している企業で利用している場合や、RDSやALB、CloudFrontといった他のAWS機能と合わせて利用したい場合には、AWSを選択すると良いでしょう。
Laravelが使用可能なレンタルサーバーまとめ
この記事のおさらい
- Laravelを動作させるにはVPSが最適
- 動作するアプリに応じて最適なスペックを選択する
- ITエンジニアに適したVPSも存在する
本記事では、Laravelが動作するレンタルサーバーについて紹介・解説しました。
Laravelは、WordPressと親和性の高いPHPで記述することから、Web系の開発で採用されているフレームワークです。PHPを学ぶのであれば、習得して損はないフレームワークと言えるでしょう。
ぜひ本記事を参考に、ご自身の用途に合った最適なVPSを見つけて、個人開発やポートフォリオ制作に役立てください。